似合わない洋服は捨てました

気まぐれに気の向くままに

あの頃

彼女と彼 11:32 彼女と彼を含むブックマーク CommentsAdd Star

彼は言いました。

僕がサンドバックになってあげるよ

彼女は最初はかげんしながら

徐々に思いきり

パンチをくりだすのです。

そうしたら、

彼女の知らないうちに

サンドバックにほころびができていて

気づかないから修理もできなくて

すっかり砂がなくなったことも知らずに

打ちつづけるのです。

彼はどうにか修理をしようと思うんだけど

彼女がその暇さえも与えないから

修理することができずに

彼はなんとかパンチされなくても

いいように努力するのだけれど

彼女は気づいてはくれないのです。

そうしてとうとう彼が言いました。

いつか僕もこんなふうに

ぼろぼろになるまでパンチされるんだよと

彼女のグローブが涙で濡れる頃には

彼はもういないのです。