似合わない洋服は捨てました

気まぐれに気の向くままに

彼女と彼

彼は言いました。
僕がサンドバックになってあげるよ
彼女は最初はかげんしながら
徐々に思いきり
パンチをくりだすのです。
そうしたら、
彼女の知らないうちに
サンドバックにほころびができていて
気づかないから修理もできなくて
すっかり砂がなくなったことも知らずに
打ちつづけるのです。
彼はどうにか修理をしようと思うんだけど
彼女がその暇さえも与えないから
修理することができずに
彼はなんとかパンチされなくても
いいように努力するのだけれど
彼女は気づいてはくれないのです。
そうしてとうとう彼が言いました。
いつか僕もこんなふうに
ぼろぼろになるまでパンチされるんだよと
彼女のグローブが涙で濡れる頃には
彼はもういないのです。