似合わない洋服は捨てました

気まぐれに気の向くままに

忘れてしまう前に

遠ざかっていた母の見舞いに

ソファーにのめり込んで座っていた。

入所したばかりの頃は、ベットに動態センサーをつけられ

スリッパには鈴をつけられ

勝手に動くことを管理されていたのに

もう1人では歩けなくなっていた。

訪ねた時もすぐにわたしとはわからなかったらしく

しばらくして、「げんき?」と聞いてくる声も

身体もすっかり細くなってしまっている。

 

素人だからわからないけど

認知症が進むのがずいぶん早い印象で

このぶんだと、もうすぐ寝たきりになるかもしれない。

寝たきりになると、見上げる角度が違うから

わたしの顔も、他兄弟の顔も あまり識別できないのかもしれない。

 

忘れてしまう前に

 

わたしは何を彼女に届けてあげるべきなのだろう。

わたしに出来る事はあるのか。

 

生きる希望や生きる意志すらも忘れてしまう病気なのだろうか。

 

認知症とは。

家族とは。

愛とは。

 

なんなんだろう。

 

それにしても、施設で働く方達へは感謝しかない。

わたしには実の母でさえ身の回りの世話をする事ができない。

そう、できないのだ。

心がまだ許していないのか

年老いた母を引き取る事も出来ない。

愛とは。

家族とは。

なんなんだろう。